宇佐美りん著:『かか』のブックレビュー・感想

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第33回三島由紀夫賞・第56回文藝賞をW受賞している、宇佐美りんさん著、『かか』の感想を、思春期の子育てをする母親の視点から記録しています。毒親育ち、アダルトチルドレンなどの苦しみを抱える皆さまには、かなりエグい作品でないかなあ…と思います。

※「序」はご挨拶文(駄文)です。お急ぎの方はスル―してくださいませ。

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序:宇佐美りんさんにハマった我が家の次女nana@中1

前回のブックレビューに続いて、今回も、宇佐美りんさんの作品を読ませていただいた。

なんでかって?

『推し、燃ゆ』で、完全に宇佐美りんさんの作品にハマった次女nanaが、次に自分で買って来た本が、この『かか』である。

ママ子、前回のレビューで、そうとう心を打ちのめされたので、
⇒ 『推し、燃ゆ』の感想・ブックレビュー【母親側から】

宇佐美りんさんの作品を読むのは、その、描写があまりにもママ子の心に刺さりすぎて、
正直、苦しくて辛くて無理だよぅ・・・
って思っていたのだが、次女nanaが、

nana:「お母さんがアル中の話だよ」

と言ったことを耳にして、ハッとした。もしかして、nanaは、ママ子と「かか」を重ねているんではないか?酒好きのママ子を、アル中の母親として、見ているのではないかと・・・思ったんだよね。

確かに、数年前まで、酒飲んで寝ちゃったりとかしょっちゅうしてたし。5年以上前ほどになるが、飲みすぎてしまい、リバースした事もあった・・・そんな醜態さらしたら、さすがにママ子の酒を飲む姿を、嫌だなと思っていたんだろうか、とチクチク心が痛んだ。

・・・

「完全にアル中に片足突っ込んでる状態だな。病院へ行け。そして二度と戻って来るな」

「子ども達に悪影響ばかり及ぼす人ですね。こんな人に受験や教育を語って欲しくありません。娘さん達が心配です。」

「酒飲んで食ってばっかいる親の隣で、受験勉強なんかできるわけねーだろバカ!」

ガーン・・・

そうだよね。英検の試験勉強中は断酒してたんだけど、今はお酒ちょっとだけ解禁してるんだよなぁ。やっぱ、完全に辞めた方が良いのかな、って最近思ってる。あー、ママ子の人生の楽しみが失われるよ(涙)

今日は、ママ子の禁酒を促すような一冊、宇佐美りんさん著『かか』についての感想を記録しています。あーマジで、泣きすぎて思いっきり疲労した。そして、母として、女として、色々な事考えた。そんな作品でした。

宇佐美りん著:『かか』のあらすじ(ざっくり)

すみません、ちょっとネタバレ含みます。

主人公の「うーちゃん」は、父親「とと」の浮気をきっかけにお母さんの「かか」が壊れてしまい、アルコール中毒になって暴れるようになった、そんな家庭に住む19歳の女の子。

弟「みーちゃん」への語り口調で書かれた、方言のような、独特な言い回しの文章。

誰にも言えない思いを、この本の中に吐露しているイメージ。「かか」の自傷のシーンは、ママ子にとっては、エグかった。残酷な本を読みなれていないので、「その程度で?」って思われるかもしれないけど、個人的には、読んでて目を背けたくなるほどだった。

「かか」と「ばば」(かかのお母さん)の関係を含む、複雑な家庭の中の描写が、その心のどろりとした不快な粘りを鮮明に描く人々のやりとり。

女を憎んで、母を憎んで、自分を憎んで、

SNSを心の拠り所にするしかない「うーちゃん」。

苦しみ、自傷する母を抱えることに耐えられなくなり、旅に出る。

正直、読後感は軽く絶望。
絶望的なのだが、うーちゃん・みーちゃんには、強く生きて欲しいと、願う。願う。
明子と仲良くなれたらいいのに、って願う。願う。

「ここからの人生、母親を捨てて、強く生きてくれ」

と、母親側の人間としては、強く思った。もう、親とのしがらみで苦しんで欲しくないよ。

ああ、主観がめっちゃ入りましたが、ざっくりとしたこの本の印象です。

現代的なSNSの描写。主人公と自分を重ねて憑依させる我が娘

あのね、宇佐美りんさんは、当時大学生でこの本を書いていて、現代の若者の行動や心情が、そのまま見て取れる。読み取れる。

「うーちゃん」も、確実に、オタクで「推し」がいて、SNSの世界にどっぷりとハマっている設定なのよ。

これさ、我が家の次女nanaが読んだら、心酔する気持ちがよーくわかったんだよね。

だって、
SNSの使い方、やり方が、「ネット依存」だと思っていたnanaの行動そのまんまだった。

いわば「nanaは、この本を読んで、思いっきり影響を受けたのね…」と、ママ子は思った。

ママ子は、その瞬間、少し嬉しくなってしまった。
不謹慎かもしれないけれど、本を読んで、間違った捉え方をして、間違った行動をする・・・

それって、めっちゃ自分の若い頃と同じような気がして。

そして、本にのめり込んで影響を受ける、あの、小説の世界観に憑りつかれたような感覚っつーか、そういう感覚が、ママ子は全然嫌いじゃなかった。つーか、好きだった。

いや、嘆くべきなのか?そうだよな。親なら嘆くべきだよな。

でもね、「本」に影響を受けるって、すっげー、いいよね。憑りつかれた、主人公が憑依しちゃった感覚に、アンタもなったのねー!!
ヒョー―――ウ、いいじゃん、いいじゃん!!

って、ママ子は、本当に、母親失格だけど、そう思ってしまった…

もちろん、インターネットで失敗してしまった事は、改めなければならないし、影響を受けて突っ走るって「バカ」丸出しだと思うし、反省すべきなんだけれども…

その原因が、この本だったのなら。この本の世界観に突き動かされてエスカレートしていた行動だとしたら・・・なんとも、若者として、まっとうな事をしているように感じた。

我が家の次女nanaが、

nana:「小説なんて嫌い。面白くもなんともない」

と、言い放っていた次女nanaが・・・

現実と物語の区別がつかないほど、本の世界にのめり込むとは、なんとも素敵なことじゃないか、ってそう思ってしまったんだ。

毒親と、アダルトチルドレンの問題に直撃している。

正直、この「かか」は、自身も毒親育ち、そして、アダルトチルドレンだと思われる。

さらに、アル中になって暴れたし、我が子に依存しまくっている描写を見ると、自分も「毒親」になってしまったのではないか。

「ばば(かかのお母さん)」に愛されなくて、ずっとずっと苦しんで来た「かか」の描写も、苦しかったし、その被害をモロに受けている「うーちゃん」の描写も、いたましいと思った。

だから、毒親育ちであったり、アダルトチルドレンだと自覚している人たちが読んだら、どれほど苦しいものかと、思った。

ママ子だって、自傷とか無いけれど、ちょっと苦しい思いをして育ってきたママ子ですら、こんなにキツイと思ったんだもの。

ということは、宇佐美りんさんは、どんだけこのドロドロした心の奥底の苦しい思いの描写を、これでもかというほど、容赦なく書き記したんだろうか、と思うほど。

うん、書き方に容赦がないと思ったよ。

エンジェル=「えんじょぉさん」の娘、うーちゃん(ネタバレ)

そんな救いようのない話なんだけど、そんな中、「うーちゃん」は、もがき苦しんだあとに、

衝撃的な発言をする。

「自分が”かか”を生んで育ててあげたい」

と、思うんだ。

今度こそうーちゃんはかかを壊さずに出会いたかったかん、たったそいだけのために、かかをにんしんしたかった。

宇佐美りん著『かか』より

そんな風に思う、うーちゃんを思って、ママ子は心が引きちぎられるかってほど、苦しくなって泣いた。泣いたよ、もうね、鼻水も涙もボロクソになって泣いた。

本当に、どんなにツライ目に遭っても、子どもって天使。親にとって、子どもって天使だ。

ママ子はいつも「ママの可愛い天使ちゃん」と言って、赤ちゃんの頃のhanaやnanaのことをなでなでして、抱きしめていた。

もしかしたら、次女nanaは、これを思い出してゾっとしていたのかもしれないと、そう思った。

昔のママ子は、次女nanaにとって、どんなお母さんだったんだろうか。
ママ子は、怖くて、威圧的で、「良い子」「できる子」を求めてばかりの「お母さん」だったんだろうか。

どんなに酷い目に遭っても、酷い事を言われても、「うーちゃん」は「かか」を助けたいとそう思って、苦しんでいた。

その事が、ママ子としては、苦しかった。何故、そんなに苦しまなくてはならないの?

誰か、助けてあげてよ。って、、始終、救われない思いを、抱えながら読み進めなくてはならなかった。

『かか』の独特な言い回しや、ひらがなの多用について。

ここは、完全にママ子の個人的な感想なので、賛否両論ある多くの意見の中の1つ、ということで認識していただきたい。

次女nanaが言っていたのは、

nana:「ナンか…読みにくかった」

nana:「何言ってるか、よくわかんないところがあった」

という感想だった。まあ、SNSの衝撃については、さすがにママ子には言えないだろうな、っていう部分なのであえて聞かなかったけれど、中学1年生の我が子が読むには、少し難しいというか、マイナスポイントも、あるみたいだね。

『かか』独特の造語表現の必要性

ママ子は、この独特のかかの造語の言い回しや、訛りのような表現方法が、この作品には必要であると、思う。

この本が「標準語」で描かれていたら、こんなに感情移入しただろうか。苦しく悲しく重いだけの作品になってしまったのではなかろうか。

「えんじょぉさん」「ありがとさんすん」「まいみーすもーす(おやすみなさい)」

これらは、かかの造語なんだけれども、これは、かかが「他の人とは違う」異質な存在と、それから、残酷な現実をほんの少し和らげているような、そんな印象を持つ。

だって、本当にキツイもん。この小説の最後の一行で、もう、ママ子、打ちのめされたんだもの。

ひらがなの多用について

この小説、正直、読みにくいなあ・・・って、思う方も多いかもしれない。

実はママ子も、最初は「読みにくいし、挫折しそう」と、思っていたので。
そう。ひらがなが、多用されてるのよ。
もちろん、わざと。
ママ子は、最初の頃、読んでて「うーちゃん」は、19歳の浪人生の設定だけれども、その描かれている口調は、5歳か6歳だと思うほど、小さい子が語っているような、そんな不思議な感覚になったのね。

でも、読み進めていくと、ちゃんと「不文律」だったり、「倫理観」だったり、大人が使うような言葉が織り交ざっている。
この主人公の19歳の女性が、本当はずぅーっと幼い頃から愛がほしくて、愛してほしくて、安心して成長しきれなくて、小さい女の子のまま、この本の中でおしゃべりしているんだな、っていう印象を受ける。

苦しい、重い、悲しい感情を、少女のまま、ずぅーっと持ち続けている。まさに、アダルトチルドレンなのかな、って思ったの。

だから、このひらがなの描写、少女のような語り口の文章は、非常にママ子の心を苦しくさせたし、切なくさせたのよ。

娘に結婚してほしい?出産してほしい?孫の顔が見たい?

『かか』には、女に生まれたことへの嫌悪感や、妊娠、出産への憎悪、母親に対する宗教的な思いも、描かれている。お母さんが「かみさま」だなんて、思ってもみなかった。宗教的な思いに通じるところがあるのかな、ってハッとさせられたよ。

なるほどなあ、って。思った。そりゃあ、宗教の「かみさま」にされちゃうほど、子どもにとって母親ってすっげえー大きな存在なんだなあ、って思った。

そんな母親が、我が子への願いとか語っちゃったら、子どもにとってはめっちゃプレッシャーになるんだよなあ・・・

数十年前の母親ならば、

「女として生まれたならば、娘には結婚して幸せになって欲しい」と思う方々が多かったよね。

今は、女性の生き方は自由。

結婚しなくても、子どもを産まなくても、避難されることはない。むしろ、ママ子からしたら、バリバリ仕事して、自分のために、社会のために生きる女性を羨ましいと思う。

もちろん、自分の孫の顔が見てみたいという好奇心は、正直あるよ。

でもね、我が子に「結婚してほしい?」「子どもを産んで欲しい?」と言われれば、確実に、

自分で決めて欲しい

と、答える。

もうね、どっちでも良いのだ。

自分の子どもが幸せならば、結婚しようが、しまいが、子どもを産もうが産まないが、どっちでも良いのが正直な気持ち。

子育ては、苦行じゃ。幸せな、苦行じゃ。

ママ子は、子育てしてて、すごく思う。

子育ては、苦行だと。いや、幸せをもたらす、苦行なんだけれども。

もうね、子どもが小さい時から、必死で子育てして「こんな風に育って欲しい」とか、「幸せになって欲しい」とか、我が子の幸福を願って、「知育だ」、「学び」だ、「中学受検だ」って、奔走してきて、へとへとよ。

ママ子、もうヘトヘト。

ここへきて、思春期の子育ての問題にぶち当たって、死ぬほどキツイ。

 ⇒ 中学1年生。対人恐怖症と、SNS(ネット)依存問題

ぶっちゃけ、我が子には、こんなツライ思いをさせたくないって、思った。

もちろんママ子は、我が子を産んで良かったと思うし、愛してるし、本当にその存在に感謝している。我が子を尊敬もしている。

だけど、「幸せ」の価値観の押し付けが起こると、トラブルも発生しちゃうんだよな。

どんなに親が必死こいても、子どもは親の思うようになんてならないし、
それを親は当たり前として受け入れていくのだ。

我が子のためを思い、貧乏な状況から打破させてやりたいと奔走したって、所詮、我が子が幸せにならなければ意味がないのだ。我が子の笑顔が消えたら、意味が無いのだ。

人間って、必死こくと、周りが見えなくなっちゃう。

「子どものため」って必死こくと、目の前の子どもの笑顔が消えていることにすら気が付かないなんて、悲しすぎるよね。

だから、ママ子は、もう、「子どもの幸せのため」に何かに必死になるのは、もう終わりにしたの。

思春期に入ったら、そんなのもう、卒業だよ。

あとは、見守って、我が子の笑顔を守って、困った時に手を差し伸べてあげられるのが、一番いいんだよね。きっと。

『かか』のエンディングは、バッドエンド?

正直、ママ子は、バッドエンドだけではないと、思いたい。

絶望を乗り越えて、新たな未来を切り開いていく、うーちゃんを、想像したい。

ママ子は、バッドエンドの小説は、自分が思いっきり鬱状態になるので、好きではないのだ。。苦しくて読めないの。

だから、親の呪縛から解き放たれて、無理やりにでも明るい未来を生きて欲しいって思う。

『推し、燃ゆ』でも、そうだったんだけど、宇佐美りんさんの作品の読後感が、あまりよくないのは、ママ子としては非常に苦しいのだが、何故こんなに評価されるのかな・・・って思うと、
心情の描写と背景・情景の描写が非常に巧妙で素晴らしいんだと思う。
とにかく、ママ子に言わせるならば「容赦がない」のだ。
容赦なく、描写してくる、エグさがあるんだよね。

読書好きに、おすすめ。『かか』の心情の描写は、必読。

さて、今回も、思いっきり独断と偏見でレビューさせていただいて、大変申し訳ないのだけれども

まさに「三島由紀夫賞」がぴったりだね、って思う作品でした。

だから、個人的には読書が好きな人におすすめしたい本。

この、読んでいて苦しくい感情が、
容赦なく心にズンズンとバズーカ砲で撃ち抜かれる感覚が、
ドⅯさんにはなんとも言えない快感となるかもしれない。

そして、自分と重なる部分があるママさんや、子どもの立場の方々は、嗚咽交じりで泣いてしまうほど、涙活できると思う。

あ、ハッピーエンドが好きな人には、もしかしたら合わないかも。
でも、ママ子も完全にハッピーエンド好き派ですが、
この作品に出会えて、非常に良かったと思っている

娘を愛する気持ちが深まったし、我が子を理解したいってめっちゃ思ったもん。

読書の秋、中学1年生の次女nanaから学ぶことが、たくさんありました。

ありがとうね、nana。

かか [ 宇佐見 りん ]

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